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A マンションの管理費や修繕積立金は何十,何百戸の集金となる為、多額となって、各地で理事長の横領事件が発覚しています。横領事件を防止するためには、基本として、預金の通帳を理事長が持ち、会計担当者が印鑑を持つ、又その逆でもいいのですが、別人が通帳と印鑑を持つということが基本です。さらに、会計報告は年一回の定期総会での報告しかないというのが一般ですので、問題が生じていても発覚が遅れ、その金は消費されてしまって返って来ないという惨状となります。マンションを区分所有していても、お金に困っている人は金融機関の抵当権がついていて、抵当権が優先してしまうのでマンションに返金されない危険もあります。
Q 具体的な横領事件について教えてください。
A 通帳と印鑑の両方を所持していた理事長が管理組合の預金を100万円ずつ引き出し、自分の口座に入れていたという事件があり、約3年間で約1000万円を着服していました。理事長が一人で預金を降ろせない方法を考えるべきだった事例です。また、あるマンションでは、理事長に就任したときには管理会社が預金証書を預っており、印鑑は理事長預かりとなっていた。ところが、理事長が交替したので名義変更が必要となった際、銀行から届いた名義変更後の約1000万円の証書を持ち出し、一時行方不明となり、外国為替の取引に使ってしまったということです。この場合も、預金証書が理事長宅に届き、印鑑と証書が同一人となった一瞬の間に問題が起きており、証書を理事長に送った金融機関にも非があるように思います。
とにかく、通帳と印鑑は同一人物が保管しない事、預金を降ろしたりするときは必ず2人以上の人が一緒に行動することが必要でしょう。同じマンションの理事長を疑いたくないという気持ちは誰にでもありますが、それがマンションの決まりであるとして、皆の大切な管理費や修繕積立金を守らなければなりません。
Q このような横領事件が発覚したときは、どうすれば良いのでしょうか。
A 横領した人を警察に告訴すべきです。横領した人は逃げることもありますので、告訴に早く踏み出すべきです。告訴と言っても難しいものではなく、まず警察に被害届を出すことから始まります。そして、臨時総会を開いて着服・横領した理事長を解任し、新しい理事長を選任するという行動を早くとるべきでしょう。なぜならば、このような金銭の問題は、早く逮捕されれば横領した金はまだ少しは持っている場合が多いのです。少しでも管理費や修繕積立金の損失を防ぐべきです。前にも書きましたように、横領する人は自己所有の区分所有部分にも金融機関の抵当権がついていて、弁償されない場合が多いのです。また、理事長を新しく決めないと次の行動がとれないからです。
Q それでは、大手管理会社にすべてを委託しておけば、理事長個人による横領はなくなるのでしょうか。
A 大手の管理会社のフロントマンや管理員による横領事件も後を断ちません。大規模のマンションでは、集会室の使用料,自転車の駐輪代等の現金で受領した小口現金を着服横領していた事件が起きています。小口現金は小額のために4年以上も気付かず、管理会社の本社の監査部の監査により発覚したとの事でした。マンションの理事会では判らなかったと言うことです。また、これも大手の管理会社の管理員の件ですが、現金で受け取った管理費を組合口座に入金せず、未集金として報告し着服横領したもので、管理費等の滞納が増えて来たので、役員が滞納していることになっている組合員に支払いを催促に行って判明したものです(マンション管理新聞より)。
Q このような管理会社には、何か処分が下ったのでしょうか。
A 「マンション管理の適正化推進に関する法律」第81条で、国土交通大臣はマンション管理業者に対し、必要な指示をする事ができると規定しています。上記のマンション業者に対し、同大臣は同81条の指示処分を行なったということです。また、上記のマンション業者は損害金の弁償を行い、フロントマンや管理員を懲戒解雇するとのことです。マンションの経費の確認は、大規模のマンションにおいてはとても役員だけではチェック出来ない場合が多いようです。会計監査の役員もいますが、その基となる数値は管理会社からの報告に基づくものであり、その報告が間違っていればどうにもチェックが出来ません。1年に1回位、現実の状況を監査する経理に明るい人に調査を依頼することもひとつの方法かと思います。
前回のコラムでは、マンションの建て替え問題を取り上げました。建て替えの実績などはまだまだ少ないですし、今、建て替えができている物件は容積率に余裕があるなど条件がいい物件に限られていますが、今後、建て替えニーズがどんどん高まる中でコストも安くなるでしょうし、技術革新も進むでしょうから、記者は楽観的であると書きました。
しかしどれだけコストが安くなってもお金はかかるわけですから、お金をどう工面するか、というのは常に課題ですね。
いきなり多額の資金を準備するのは難しいですから前もって準備しておく必要があります。その基本となるのが毎月支払う修繕積立金ですね。仮に月1万円とすると、年間12万円。10年で120万円。30年で360万円。建て替えには一桁足りませんし、10数年に一度くらいある大規模修繕で使い果たしそうですが、とはいえ大規模修繕で建物の寿命が延びれば建て替え時期も遅れるわけですし、その間にさらにコストダウンが進むかもしれません。直接的にも間接的にも修繕積立金は建て替えの大きな味方ですね。
その「虎の子」の修繕積立金を横領してしまう事件が発生しているようです。
上記記事によればいくつかのケースがあるようですが、1つは理事長が預金とハンコの両方を持っていて、勝手に使ってしまう場合ですね。当然、預金とハンコは別々に保管し、勝手に引き出せないようにしないといけないわけですが、上記の例ではそもそも理事長が預金とハンコを両方持っていたようです。これは理事長がもちろん悪いとしても、周りのメンバーも一定の責任がありそうです。
ただその不正が発覚すれば理事長はまずそこに住めなくなるでしょうから、不正をする方も相当、覚悟が必要です。引越しをするのは簡単でも自分の家がそこにあるわけで、場合によっては資産価値も下がっているかもしれませんし、いくらお金に困ったとしても割りにあわなそうです。
とはいえ、それくらい切羽詰った人は世の中にはもちろんいるわけで、その人が理事長になったり、あるいは理事長に立候補して当選することもあるでしょうから、やはり仕組みとして抑止力を持たせないといけませんね。
また理事長だけでなく管理会社による横領もあるようです。組織ぐるみというよりは、管理人の犯行だと思いますが、こちらは別に自分のマイホームを天秤に掛けるというような話ではありませんので、より容易に発生しそうですね。
記事では、管理人が管理費を現金で徴収して、それを横領したケースも指摘されています。マンションも築年数が経ってくると、入居者の経済状況も変わってきますから、一定割合で管理費などの滞納が出てきます。その滞納を隠れ蓑にして横領するというのは確かにありえそうです。
管理費も、仮に月1万円×100戸のマンションであれば毎月100万円ですし、修繕積立金も月1万円×100戸×12ヶ月=1,200万円となります。数万円の売上金を狙ってタクシー強盗が起こるくらいですから、「出来心」を起こさせるには充分な金額ですね。
横領はあってはならないことですが、仮に横領があっても誰も助けてくれません。自分たちのお金は自分たちで守る、しっかりした自己責任の意識が必要そうですね。
(編集部)