このページでは、住宅ローン、住宅に関する各種ニュースや情報をご紹介します。

2010年8月24日

＜産経ＢＩＺ＞

　快適な施設やサービスをウリにしたマンションが続々と登場している。最上階に居住者専用のプールを設けたり、ピアノを備えたスタジオを設置したり。いずれも億ションと思いきや、サラリーマンでも手が届く物件が結構あるから驚きだ。

　快適マンションの筆頭格的な存在といえば、昨年３月に完成した「ブリリアマーレ有明」（東京都江東区、総戸数１０８５戸）。

　東京駅からＪＲ京葉線経由で約２０分、東京臨海高速鉄道りんかい線の国際展示場駅を降りると、日本有数のテニス場「有明テニスの森公園」が眼前に広がる。この公園を見下ろすようにたたずんでいるのがブリリアマーレだ。

　緑あふれる環境のよさに加え、充実した設備がウリ。最上階の３３階に居住者専用のプール、スポーツジム、スパ、バーラウンジがあり、屋上には緑を配したぜいたくなテラスもある。

　不動産情報会社ネクストの２００８年新築マンション人気ランキングで見事、全国１位に輝いた物件。気になる価格は、２ＬＤＫ〜３ＬＤＫ（６０〜７０平方メートル）で４０００万〜５０００万円台の価格帯が多く、サラリーマンでも手が届く。

　近畿圏では、来年３月完成予定の「ＯＳＡＫＡ福島タワー」（大阪市福島区、５４０戸）が注目されている。

　徒歩１０分圏内に鉄道５線８駅が集中する好立地もさることながら、共用施設が至れり尽くせり。ピアノを置いたスタジオルームや、映画などが楽しめるシアタールーム、フィットネスに使えるマルチスタジオ、読書用のライブラリーまで備えられている。

　価格は、先のブリリアマーレと同じような感じで、４０００万〜５０００万円台の価格帯が多くなっている。

　セキュリティー面で充実しているのは、来年３月完成予定の「プラウドシティ池袋本町」（東京都豊島区、７８５戸）。敷地内への侵入を排除する要塞のようなゲートを導入している。

　このほか、居住者で車を共有するカーシェアリングを採用。「駐車場など車の維持費を節約したい人に反応がよく、これを決め手に購入した人もいる」（モデルルーム販売員）という。第１〜第２期２次分譲の６２３戸すべてが即日完売という人気物件だ。こちらもブリリアマーレと同じような価格帯。

　極めつけは、東京・六本木に建設中の「ＴＨＥ　ＲＯＰＰＯＮＧＩ　ＴＯＫＹＯ　ＣＬＵＢ　ＲＥＳＩＤＥＮＣＥ」（６１１戸）。六本木交差点から徒歩３分の好立地に来年９月の完成を目指している。

　驚かされるのはそのサービス内容。２４時間のルームサービスのほか、ホテルのように部屋の掃除を毎日してくれるハウスキーピング、マイカーを利用する際、ポーターがエントランスまで車を運ぶバレーパーキングなどを提供する。

　豪華なホテルが自宅になるようなもので「販売対象はもっぱらセレブ。分譲価格は億ションばかり」（不動産関係者）とそれなりに高い。

　こうした快適マンションが続出する背景には、何があるのか。不動産コンサルタントは次のように解説する。

　「一昨年のリーマン・ショック以降、マンションの売れ行きが急激に落ち込み、不動産会社にとっては、今後開発する物件をどうやって売るかが最大のテーマ。経営体力のある大手不動産会社を中心に、購買意欲を刺激するような付加価値の高いマンションをつくる流れが生まれ、それがホテル並みの設備やサービスに結びついている」

　低迷する不動産市場にあって、こうしたマンションは好調な売れ行きをみせているという。

　「マンションは人生最大の買い物。購入側が気に入りさえすれば、『どうせ一生住むのだから』と、割高の物件でも買う傾向がある」（先の不動産コンサルタント）

　ただ、注意点もあるようで、「設備やサービスが充実すると、それだけ維持費も高くなる。設備は時間とともに劣化のスピードが速くなり、補修する回数も増えてくる。当初はよくても、毎月の管理費や修繕積立金は必ず上がる。買うなら、それを十分理解した上で判断すべきだろう」（同）という。

人間は決して合理的ではありません。モノを買った理由を合理的に説明しようとする人もいますが、たいがいは言い訳ですね。モノを買う理由の多くの場合は、ただ単に「欲しくなったから」です。

クルマも合理性を突き詰めれば、毎日乗る人ならまだしも、週末しか乗らない人であれば所有する合理性はほとんどありません。タクシーや公共交通機関、レンタカーなどを組み合わせたほうがよっぽどコストは抑えられるはずです。それでもなぜクルマを買うかというと・・・やっぱり「欲しいから」ですよね。

若者のクルマ離れが言われておりまして、本当にそうなのかどうか記者は知りませんが、もしそうなのだとしてその理由が合理性から来ているのであれば、それはそれでスマートですよね。物欲にまみれた記者からすればちょっとうらやましいです（笑）。記者は週末しか乗りませんが、新しいクルマが欲しいです。

マンション販売についても同様で、見込みのある顧客に対して「欲しい」と思ってもらう必要があるわけですが、そのためには合理性だけでない付加価値が必要となってきます。今回の記事で取り上げられているマンションの付加価値の例は以下のようなものです。

・最上階にある、居住者専用のプール、スポーツジム、スパ、バーラウンジ
・屋上には緑を配したぜいたくなテラス
・ピアノを置いたスタジオルーム
・映画などが楽しめるシアタールーム
・フィットネスに使えるマルチスタジオ
・読書用のライブラリー
・居住者で車を共有するカーシェアリング
・２４時間のルームサービス
・部屋の掃除を毎日してくれるハウスキーピング
・マイカーを利用する際、ポーターがエントランスまで車を運ぶバレーパーキング

どれも素敵ですね。入居後の「夢のような生活」を想像させるのに十分なアイテムの数々です。確かにマンション購入は一生に一度の買い物。どうせ買うなら、実用性だけでなく「夢」も一緒に買いたいですね。しかも記事に取り上げられている「ブリリアマーレ有明」なら、中心価格帯が４，０００万〜５，０００万円ということで、庶民でも十分手が届きます。同じような値段なら付加価値の大きいものを、と考えるのも当然かもしれません。

実際、「ブリリアマーレ有明」は、記事によれば「不動産情報会社ネクストの２００８年新築マンション人気ランキングで見事、全国１位に輝いた物件」ということです。

しかし。

当たり前ではありますが、豪華な共用設備というのは管理費に直接跳ね返ってきます。仮に「居住者専用のプール、スポーツジム、スパ、バーラウンジ」の維持費が年間１億円だとすると、１戸あたり月１万円くらいの管理費負担となります。毎日プールに入るならそれでも安いかもしれませんが、しかし住民全員（３，０００人くらい？）が毎日泳げるようなキャパシティは多分ないでしょう。

となると多くの住民にとってはこの管理費は「持ち出し」ということになります。

また管理費だけでも持ち出しなわけですが、今度は修繕の問題が出てきます。プールの耐用年数はよくわかりませんが、１０〜２０年に１回くらい大規模な修繕が必要で、相場は全く知りませんが、仮に３億円くらいかかるとすると、一戸あたり３０万円くらいの費用がさらにかかってきます。１０年に１回、３０万円とすると、月あたり２，５００円。先の管理費と合わせて、実質的に毎月１万２，５００円の負担となります。

それなら区民プールや、普通のスポーツジムを利用した方がいいような気がしますね。確か近くに立派な温水の区民プールがあったと思いますし。

そして、それより問題なのは、この管理費負担は、プールを利用する・しないにかかわらず、全住戸に強いられるということですね。毎月の負担が１万２，５００円増えるのは大きいですよね。住宅ローン負担も考えれば、管理費や修繕積立金の負担は１円でも少なくしたいところです。

というわけで、お買い物は合理的なものではないとは認めつつ、マンション購入は実用性だけでなく、「夢」も買いたいという気持ちは理解しつつ、それでも実際の負担を考えれば、立派過ぎる共用施設というのは正直、オススメできないですね。

それよりも税金がジャブジャブ投入されている公共の施設を利用した方が安いし、「税金の回収」という観点からも合理的です。

ちなみになぜこの「ブリリアマーレ有明」がそんな立派な共用施設を売りにしているかと言うと、ぶっちゃけ、あまりに不便な環境にあるからですよね？有明エリアは倉庫か空き地しかありませんから、今のところ、スーパーや学校、病院などのインフラがほとんど全くないはずです。付加価値重視のマンションは、なぜそんなに付加価値をつけないといけないのか考えてみても良さそうです。
（編集部）