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◆未完成でもローン
埼玉県警によると、アーバンエステートの元会長(61)らは破綻を認識しながら、「希望通りに家を建てます」などと虚偽の説明をし、請負代金の一部約1600万円をだまし取った詐欺の疑いが持たれている。
同社は平成21年4月に自己破産。首都圏を中心に住宅約500棟が未着工や未完成のままだ。
注文住宅をめぐっては、同年3月、富士ハウス(本社・浜松市)が自己破産。アーバン社同様、代金の多くを支払ったのに未着工となるケースが相次ぎ、問題となった。国民生活センターによると、新築住宅(建て売り)をめぐるトラブルは、17年度にここ10年で最多の3063件を数え、その後も2千件を超える件数で推移している。今年度も今月6日までに1597件の相談があり、昨年同期(1412件)を上回っている。
「新築建売住宅を購入したが、引き渡し時期を1カ月過ぎても完成しない」(甲信越地方の20代女性)▽「昨年9月に完成予定だったが、施工ミスで12月に延びた。その後、再度ミスが見つかり再延期になったが、ローン返済は予定通り始まる。どうすればよいか」(山陽地方の男性)−など、引き渡しをめぐる相談も多い。ある建設業者は「施工中に業者が夜逃げしてしまうなどのトラブルは相当数ある」と打ち明ける。
◆5割以上は払わない
住宅購入について、不動産コンサルタントの長谷川高さんは「自動車なら大手メーカーしかなく、どの営業マンから買っても品質は同じ。だが、住宅の場合は金額が大きいのに業者の95%以上が中小企業。品質や保証にもばらつきがある」と指摘する。評判が良くても業績が良いとは限らず、個人で経営状態を把握するのは難しい。
ただ、代金を支払ったのに業者が倒産して完成しないなどの“泣き”を見ないためには、工事の進行状況に合わせてお金を支払うのが基本。材料費など施工前にある程度の金額を支払うのは仕方ないとしても、全体の5割以上を最初に支払うのは避けた方がよい。
長谷川さんは「『契約締結時に1割・棟上げの段階で5割・完成した段階で4割』と分けて支払えば、途中で工事が止まっても手元にある程度の資金は残る。『先に払ってくれれば値引きします』というのは危険な営業トーク。支払い方法が納得できる業者を選ぶこと」とアドバイスする。
また、倒産などで工事ができなくなった場合、追加の工事費用や前払い金の一部を保証する「住宅完成保証制度」に加入している業者を選ぶなど、消費者側がリスクに備えることも重要だ。
◆倒産多い建築業者
民間調査会社「帝国データバンク」によると、木造建築工事業者の倒産(法的整理による)は、平成17年には234件(負債総額487億9千万円)だった。しかし、リーマンショックなどの影響で20年に425件、同1069億900万円と1千億円を超えると、翌21年も455件、同1227億100万円と増加した。
中小企業や住宅ローン利用者の借金返済を一定期間猶予する「中小企業金融円滑化法」が同年12月に施行されたため、22年(11月末まで)の倒産件数は314件(同648億6500万円)と減少。しかし、同社は「住宅を取り巻く状況は改善されておらず、今後も倒産が相次ぐ可能性がある」と分析している。
最近、大きく報道されているのが2009年4月に破綻した注文住宅販売会社「アーバンエステート」による被害ですね。いくら工事代金を支払っても、業者が倒産してしまえば家の建設はストップしてしまうのが世の常ですが、今回の事件は、実質破綻状況にあることを知りながら積極的に受注を募っていたことが「詐欺」と疑われているようです。
ただ会社が傾きつつある時でも、そこで諦めてしまうと本当に会社が潰れてしまうわけで、潰れないよう、より一層頑張るのがこれまた世の常であります。もちろん危機を耐え切って復活する企業だってあるわけで、どこまでが懸命の努力で、どこからが詐欺なのかを見極めるのは結構、難しいでしょうね・・・。
一方で詐欺であったかどうか、故意であったかどうか、悪質であったかどうかはともかくとして、施主=顧客からすれば、どちらにせよ家が建たないことには変わりはありません。同じ時期に倒産した富士ハウスの時も未完成の家が多く残り問題となりましたが、やはり施主からすればそういったリスクを頭に入れて、対策を考えておくことが必要ですね。
上記記事では2つの方法がアドバイスされています。1つ目の方法が工事の進捗度合いに応じて払っていく方法で、具体的には「契約締結時に1割・棟上げの段階で5割・完成した段階で4割」払っていく、ということですね。確かにこれなら、仮に工事の途中で倒産したとしても、残りのお金で他の業者に頼めばよく、仮に追加の費用が発生したとしてもそれほど多額にはならなそうです。
2つ目の方法が「住宅完成保証制度」を利用する、というものですね。これは住宅保証機構という公の組織が提供している保証制度で、仮に住宅建設の途中で建設会社が倒産した場合に、別の業者が引き継ぎ、完成させてくれる制度です。この制度を利用するためにはいくらか費用がかかると思いますが、大手の建設会社ならともかく、中小の工務店などを利用する場合は、やはり利用しておきたい制度、ということになるのでしょうね。
上記記事によれば、国民生活センターが把握しているものだけで、新築住宅に関するトラブルは年間2,000件程度あるようです。もちろん、そのトラブルの全てが、今回のアーバン社の事件のように「お金を払ったけれど完成しない」という悲惨なものではないとは思いますが、件数がかなり多いのが気になるところですね。
日本経済はリーマンショックの痛手から徐々に回復しつつありますが、とは言え住宅の建設数自体はまだまだ低空飛行の状態が続いていますね。経営が苦しい建設会社も少なくないと思います。
ありきたりの方法ではありますが、上記の対策に加えて、やはり建設業者もなるべく大手で、黒字経営を維持しているところを選んだ方が良さそうですね。特に住宅は5年後や10年後に問題が出てくることも多いですからね。仮に無事、家が建ったとしても、10年後には業者が倒産していた、というのでは困ります。その点からもやはり大手の方が安心です。もちろんその分、割高にはなってしまいますが・・・。
長い目で見れば日本の住宅市場は、少子高齢化に伴い縮小するのはまず間違いないでしょうから、これからも「業者の倒産」というのは一定割合で続いていくものと思います。神経質になりすぎる必要はないのかもしれませんが、金額が大きいですからね・・・。業者選びに失敗すれば回復不能なダメージを受ける可能性があります。そうしたリスクをしっかり頭に入れた上で、万全の対策を期していただければと思います。
(編集部)