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そんな中、最近では「値ごろ感」や、「中古+リフォーム」という手法を使い、より自らの嗜好に合わせた住宅にアレンジできるという新しい価値観の台頭等により、中古住宅に関するニーズも増加し始めている。今回は、これまで住宅の購入オプションの中においては、どちらかと言えば敬遠されがちであった「中古住宅を選択することの価値」を、経営コンサルタントの視点で、あらためて紐解いてみたい。
「持ち家なのに購入価格が安いこと」の価値
中古住宅を選択する価値の1つ目は、まずは単純に「価格が安い」ということである。
新築で持ち家を購入する場合、全額キャッシュで購入できる方を除き、多くの人がローンを組んで購入する。この時の購入者の状態を、企業の財務状況を分析するバランスシート分析で評価するとすれば、それは即ち、大きな負債を負って資産を膨らませた状況にあるといえる。しかも資産の部は、その大半を「新築住宅」が占め、さらにこの住宅(=固定資産)は時価会計の原則に則り、毎年その資産を目減りさせなければならない。だとすれば、一定期間後、ローンの残高によっては債務超過に陥る可能性も高いということになる。
つまり、新築住宅をローンで購入する事は、資産の目減り具合とローン(長期負債)の返済具合のバランスを十分に考慮しなければ、事実上、デフォルトリスクが高まるということである。
その点、中古住宅の場合、ある程度、そのデフォルトリスクが低減される。第一に、中古住宅は新築よりローンがつきにくいという事情がある一方、仮にローンを組む場合においても、当然その額や期間は小額かつ短期に収まるといえる。
第二に、資産の部に入る「中古不動産」は既に十分に減価された状態で資産参入されるので、時価会計に則った資産の目減り具合も、新築に比べればそれほど大きくはない。よって、負債の額が資産の額を上回るという意味で定義される「債務超過」に陥るリスクは、大きく低減されると言ってよいだろう。
第三に、意外に見落としがちではあるが、中古住宅と新築住宅の価格差によって得られる、その他資産への投資といった「機会利益」の獲得という視点も、デフォルトリスク低減に繋がる。新築住宅を購入した場合、多くの方がそれ以上の多額の資産を購入する余裕はほとんどなく、投資的観点から見れば、住宅購入以降発見した、よりリスクが低くリターンの高い投資対象に投資する機会を見過ごさざるを得ない。結果、財務上の資産ポートフォリオ構築によるリスク分散も図ることができず、リスクに対しても脆弱な財務体質になってしまうといえる。中古住宅を選択し、ある程度資金的余裕を持つ事は、このようなリスクを防ぐことにもつながるのである。
「選択肢の多さ」は買い手の交渉力を高める
中古住宅を選択する価値の2つ目は、「選択肢が多い」という点である。
例えば、単純にエリアを限定して住宅を探す場合、一概には言えないが、新築に比べ中古の方がその選択肢は多彩であるというのが一般的であろう。この「選択肢が多い事の価値」については、一方で「選択肢が多いほうが迷ってしまい、結果的に価値の低いものを選択してしまう」といったような消費者行動論を展開する識者もいるようだが、個人的にはそれ以上に「選択肢の多さが『交渉』の力を高める」という点に注目したい。
仮に住宅購入を売り手(不動産会社)と買い手の交渉問題と捉えると、豊富な選択肢の存在は、明らかに買い手の交渉力を高める事に繋がる。多くの物件情報を得る事で、価格の相場観や建物のハード面(構造、広さ、間取り等)の押えどころといった、そのエリアで住宅を購入する上でのポイントが明らかになることに加え、選択肢の多さそのものが交渉を進める上では買い手に有利な環境を提供してくれるといえる。
企業も個人も、選択肢が少ない中での交渉または取引は、相手に主導権を握られやすく、自らにとって不利な選択、すなわち相手からの搾取を受けやすい状況に陥る可能性が高いといえる。その意味において、「選択肢の豊富さ」は、それそのものに一定の価値があるとも言える。
よって、中古住宅を購入するというオプションを検討する際には、このメリット(価値)を十分に活かすべきだろう。
「既にそこに存在すること」の価値 “生活する場”の価値を事前に確認できる
中古住宅を選択する価値の3つ目は、「既にそこに存在している」という点である。
新築の場合、戸建にせよ、マンションにせよ、購入の意思を決定した時期と実際に入居する時期、または購入代金の支払いを終える時期には、一定の時間的ズレが生じる。この期間に生じる不確実性に伴うリスクは、購入者に帰属されるものとなる。例えば、景気の変動、金利の変動、想像していたイメージと実際の物件とのギャップ、他の物件への心移り等といった不確実性だ。このように新築住宅の購入時には、意思決定と代金の支払い、入居の時期がほぼ同時期となる中古住宅を購入するケースでは発生しないこのようなリスクを甘受せざるを得ない。
また、「既にそこに存在している」という意味は、単に物理的に建物が竣工されているか否かという概念に留まらない。新築の場合でも、戸建の建売住宅や、完成済マンション販売など、既に竣工された物件を購入する事も選択肢としては可能である。
しかしながら、それはあくまでも物理的に存在しているという意味のみであり、その地域や社会に溶け込んだ居住空間としての歴史や価値は未知数という事がいえる。その場所で居住することの価値やリスクは、実際に生活を行うという実績や経験で顕在化されるものであり、また時間的な経過を経ることでその地域や社会にその住宅が溶け込むという事も言えるであろう。
わかりやすい例で言えば、それらを顕在化させやすいものとして分譲マンションにおける居住者間のコミュニティや管理の醸成具合などが挙げられる。居住者間の絆が深く、適正な管理が実施されているマンションの価値は、意外に大きい。
今回の東日本大震災時においても、首都圏のマンションでは、震災直後の動きがマンション管理組合の醸成度合によって大きく異なったという事例も散見されている。災害時の自助・共助・公助の3原則で言えば、2番の共助は管理組合の普段からのコミュニケーション及び当日の迅速かつ冷静な動きに依存するところが大きい。このような目に見えない、その住宅を含めたコミュニティや地域社会とのつながり、そこに居住することの価値は、まさに「そこに存在している」中古住宅でしか顕在化されないものである。
企業が実施する大規模な設備投資や不動産投資と、私たちの住宅購入が大きく異なる点は、まさにこの「生活する場」を購入するという視点が加わることであろう。住宅購入の場合、単にその設備や不動産の物理的、機能的、経済的効用を最大化させる選択肢を合理的に選別するという視点のみならず、「生活する場」という大切な価値や視点を見落とす事はできない。逆に言えば、中古住宅を選択する際には、ある程度のその価値を事前に確認する事が可能であり、私たちはこのような視点も十分に考慮・検証するべきであるといえる。
<編集部からのコメント>
先日も取り上げた、経営コンサルタント氏のコラム。今回もまた、言葉が堅く、そして長いですね・・・。箔をつけようと思うとこうなるのかもしれませんが、少なくとも半分の長さにできると思います・・・。
それはともかくとして、今回のテーマは「中古住宅は新築よりお得!?」ということで、中古住宅の優位性について説いています。内容自体はなかなか興味深いですね。経営コンサルタント氏は中古住宅の優位性について、以下のように指摘しております。
1.価格が安い
2.既に十分価値が下がっているので、それ以上下がりにくい
3.浮いたお金で預金をしたり、投資をすれば、利息やリターンが得られる
4.選択肢が多いので買い手に有利な交渉ができる
5.購入してから、入居するまでの時間的なズレがない
6.既に建設されているため、イメージとのギャップが少ない
7.コミュニティや地域社会とのつながりが既に出来上がっているので安心
概ね納得のできるものばかりですね。一方、デメリットは何なのでしょうか?コンサルタント氏は以下を挙げております。
1.ローンや税制に関する優遇が少ない
2.担保としての価値が低い
3.資産価値も低い
4.仲介会社の手数料が高い
まぁ、これもそうですかね。特に住宅ローン減税の対象になるかどうかで、受けれるメリットが数百万円変わってきますから、ここはしっかりチェックしたいポイントと言えるのかもしれません。
では記者が新築派か中古派かと言われれば・・・どちらかとなると中古派でしょうか。ポイントとしてはメリット2の「既に十分価値が下がっているので、それ以上下がりにくい」という点であります。特にマンションではなく、「戸建て」の場合は特にその傾向が顕著ですね。
仮に、戸建てで、新築時に土地2,000万円、建物2,000万円の物件が、築10年で売却された場合の値段はいくらでしょうか?恐らく10年もすれば建物の価値は相当減っていると思います。さすがに0ではないにしても1/4くらいにはなっているのではないでしょうか?そうすると、値段は土地代を合わせて2,500万円ということになります。
10年で1,500万円も価値が減った計算になりますが、ではさらに10年後は、もう1,500万円価値が減るのでしょうか?もちろんそんなことはありません。土地は基本的には、大きく価値が減ることは考えにくいからですね。とすると、下がっても建物代の500万円が減るくらいですから、購入時の価値の大部分を維持できることになります。
その後、20年住んだとしても、価値の目減りは建物の500万円部分だけです。つまり、地価に大きな変動がなければ、20年後に売却しても土地代の2,000万円は返ってくることになります。最初の10年で1,500万円の価値を失ったことを考えれば、次の20年で500万円しか価値が減らないのは大きなメリットと言えます。
では20年後、30年後の時点でその建物に住めなくなっているかと言うとそんなことはありませんね。結局のところ、実際の「利用価値」以上に、建物の「資産価値=売却価格」は下がる傾向にあり、であれば、その傾向をうまく利用すれば、より合理的な買い物ができる、というわけです。
分かりやすい例でいえばクルマですね。クルマは10年もすればほぼ無価値、0円ですが、では10年落ちのクルマが走れないかと言うとそんなことはありません。であれば10年おちのクルマを購入して、潰れれば買い換える、ということを繰り返せば、維持費はともかく、購入コストはかなり低く抑えられます。
ただ合理的な買い物を好む記者ではありますが、中古住宅を購入するデメリットをもう1つ挙げるとすれば、確かに住宅そのものの利用価値は10年でなくなるわけではありませんが、水周りや什器、備品、配管といった類のものは10年くらいで結構、ガタがくる、ということです。これらは毎日使い、手にふれ、目に触れるものだけに、不具合が起きると、想像以上に満足度を下げる可能性があります。
また外観も10年もすれば結構、ボロくみえます。
海外の場合は、中古物件の方が流通量が多いとのことですが、こういったもののメンテナンスというのはどうしているのでしょうね?
いずれにせよ、「安く買ったけれど、品質も低かった」というようなことにならないように、中古住宅を購入した場合は、内装も外装も思い切って新しいものに取り替えておくことをオススメします。そうすれば満足度を長く維持できるのではないでしょうか。
中古物件を検討されている方は参考になさってください。