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<解説・異論・反論>
住宅市場については増税前の駆け込み需要の反動からなかなか抜け出せずにいますが、それでも基調としては徐々に回復しつつあるようです。引き続き手厚い住宅ローン減税が提供されておりますし、住宅ローン金利も「異次元緩和」により、超・低金利を維持しています。
さらに地価は徐々に上昇しつつありますし、この春の労使交渉では賃上げ傾向がより鮮明に出てきています。つまりは追い風はいくつもあるわけで、駆け込み需要のような爆発的なパワーはなくても、需要を喚起する材料はそろっているということですね。
加えてその駆け込み需要についても、2017年の消費税再増税に向けて徐々に表れてくるでしょうから、少なくともここから1〜2年の住宅市場については期待できそうです。逆に言えば再増税後は長い長い冬に入っていきそうですが・・・。
それはともかくとして、そのように住宅需要が回復してくるのであれば同様に住宅ローン市場も回復しておかしくないわけですが、では足元の状況はどうなっているのでしょうか?
その点で参考になるのが日銀が3ヶ月ごとに実施・発表している主要銀行貸出動向アンケート調査ですね。他の住宅ローン関連の調査だと、実施してから発表するまでに半年から1年以上経過するものもありますが、こちらは3月に実施して4月に発表するわけですからなかなかタイムリーです。
ではその気になる住宅ローン需要はと言うと、「資金需要判断DI」は今回、3ということになっています。
このDIは資金需要が増加したとする金融機関を「2ポイント」、やや増加したとする金融機関を「1ポイント」、逆にやや減少したとする金融機関を「−1ポイント」、減少したとする金融機関を「−2ポイント」とし、その合計値で産出するものですね。
実際の住宅ローンの金額ではなく回答した金融機関の数で判断するため、計算方法としてはシンプルかつ、ある意味「乱暴」ですが、だからこそ素早く発表できるという面があるわけで、そのあたりは一長一短と言えるかもしれません。
で、今回上記の通りそのDIが3だったということは「住宅ローンの資金需要が増加した」と回答した金融機関が多かったということを意味しますが、実際の回答の分布はこのようになっています。
・増加 : 0
・やや増加 : 6
・横ばい : 41
・やや減少 : 3
・減少 : 0
回答の大部分は横ばいなわけですが、やや増加と答えた金融機関が6と、やや減少と答えた金融機関の数=3を、3上回ったために全体のDIとしては「3」になったということですね。
これだけを見れば悪くない結果のように感じますが、だたこれまでのトレンドを振り返ると必ずしもそうではないのかもしれません。グラフとしてはこういうことですね。
数値としてはプラスを維持しているものの、前回調査結果の「4」からは一歩後退していますし、2012年以降の活況や、リーマンショック前の状況と比較すればむしろ「低調」と言ってもいいのかもしれません。
住宅ローン利用者からすれば、住宅ローン市場が盛り上がっていようが盛り下がっていようがそれほど関係なく、むしろ盛り下がってくれるくらいの方がいいのかもしれませんが、銀行関係者からすればまだまだ楽観できる状況ではなさそうです。
実際のところ、今後3ヶ月の需要予想もこのようになっています。
・増加 : 0
・やや増加 : 2
・横ばい : 47
・やや減少 : 1
・減少 : 0
こちらはもっと控えめでDIは「1」とかろうじてプラスを維持している状況です。つまりは住宅ローン需要が増加していく予兆は今のところほとんどないということですね。
そうした状況に追い打ちをかけそうなのが、金融機関の「貸出運営スタンス」です。回答結果はこのようになっています。
・積極化 : 6
・やや積極化 : 4
・ほぼ不変 : 40
・やや慎重化 : 0
・慎重化 : 0
こちらも前回調査の「19」からは一歩後退しているものの、それでもトータルで「16」とかなり積極的な状況であるのは間違いなさそうです。だとすると需要の方はまだ弱いのに、供給の方が強いわけで・・・つまり住宅ローンの熾烈な貸し出し競争がまだまだ続くことを示唆しているわけですね。
金融庁が過剰な住宅ローン競争の実態を把握するために調査を開始したということですが、今のところ市場金利の動き以上に住宅ローン金利を引き上げるといった動きは出てきていません。
となると、銀行関係者の方々には申し訳ないですが、住宅ローン利用者からすれば、まだまだ「借り手優位」の状況が続くということですね。この好機をしっかり生かしていただければと思います。
参考になさってください。