※当サイトには広告リンクが含まれています。
<解説・異論・反論>
住宅ローンの中でも、10年・20年・30年といった固定金利タイプの基準となっているのが10年もの国債金利=いわゆる長期金利です。この長期金利が最近どのように推移しているかと言うとこういうことですね。
今年の1月に過去最低金利を大幅に更新した長期金利ですが、その後はなぜか断続的に上昇し6月や7月には一時0.5%を超える水準に達しました。アメリカの利上げ懸念などを背景にした動きだったのかもしれませんが、国内で大規模な金融緩和が行われている現状では金利が上昇する余地はほとんどありません。
つまりは違和感のある動きだったわけですが、実際、8月以降の長期金利は世界の株安やアメリカの利上げ延期などの動きを受けて順調に低下していますね。このまま落ち着いていってくれることを期待したいと思います。
このように足元では徐々に金利の低下傾向が鮮明になっているわけですが、長期的に見ても金利の低位安定を示唆する材料が多いですね。1つ目は安倍政権が新たな目標として提示した「GDP600兆円目標」です。
これは実質ではなく「名目」GDPである点が味噌ですね。実質は「数量」、名目は「金額」で計られるわけですが、金額で計られるということはどんどんインフレが進み、貨幣の価値が下がればそれだけ見た目の金額が増えていくことになります。
つまり600兆円目標達成のためには数量ベースでGDPを底上げするだけでなく、金額ベースで「お化粧」していく両輪の動きが求められるわけですね。だとすればこの達成目途である2020年までは間違いなく金融緩和が拡大され、インフレの加速を働きかけるのではないかと思います。
そして金融緩和が拡大されるということは金利がさらに低下することを意味します。
>>>低金利は2020年まで続く!?GDP600兆円目標と住宅ローン金利の関係
また、2つ目に長期的な金利の低下を示唆するものとして「2020年のプライマリーバランス黒字化目標」があります。政府は破綻間際の財政につき2020年までに一定の改善を達成する目標を掲げているわけですが、そのためには景気を拡大し、税収を増やす必要があります。とするとそれまでは金融緩和を続けざるを得ないという見立てですね。
と言うのも金融緩和を縮小すれば景気に水が差されてしまうからで、こちらも一定の説得力があります。
さらに「2020年のGDP600兆円達成」を本気で目指すのであれば、増税と歳出削減が絶対に必要な「プライマリーバランス黒字化目標」は達成時期が後ろ倒しになる可能性が高いです。そもそもこの2つの目標は同時達成が難しいからですね。
仮にプライマリーバランス黒字化の達成時期が2023年や2025年、2030年に後ろ倒しになるのであれば少なくともそれまでは金融緩和が続き、金利の低位安定はさらに長期化することになります。
そもそも永遠にプライマリーバランスが黒字化しない可能性もありますが・・・それはホラーストーリーとなりますのでここで深入りするのはやめておくことにします。
そのように短期でも長期でも金融緩和の継続=低金利の継続を示唆する材料が多いわけですが、どうやら残る「中期」でも金利の低位安定を示唆する材料が出てきそうです。
何かと言えば上記引用させていただいた記事の通りですが、日銀が今月末に発表する物価情勢の展望レポートで、消費者物価上昇率=インフレ率の見通しを下げる方向ということですね。
憶測記事なのかもしれませんが事前にレポートの内容が報道されるのもどうかという気がしますが、それはともかくとして気になるインフレ率はこのように変化する予定とのことです。
・2015年度 : 0.7% → 0%台前半
・2016年度 : 1.9% → 小幅下方修正
要するにどちらも下がるわけですが、2015年に2%の物価上昇率を目指すという「公約」は完全に反故になりつつあるということですね。誰も責任を取らないのでしょうか?
責任の所在はさておき、今回の下方修正はそれ以上に象徴的な意味合いがあります。と言うのもこれで2017年3月までの金利上昇はほぼなくなるからですね。
なぜなら、繰り返しになりますが日銀のインフレ率目標は2%なわけですが、2017年3月まで概ねその水準に届かないとすれば、インフレを促す金融緩和を継続・拡大するしかないからですね。
金融緩和が継続されるということは低金利も継続することを意味する、というのは申し上げた通りです。
そもそも少子高齢化が進む日本では永遠にインフレ率が2%に到達しない可能性もあるのではないかと思ったりします・・・だとすれば低金利は永遠に続くということですね。
そんなわけで市場金利が短期的にも中期的にも長期的にも上昇しないのだとすれば、住宅ローン金利も同じように上昇しないことになります。
消費者の方々の「金利先高観」も徐々に後退しているのではないかと思いますが、そうした感覚はおおむね正しいということですね。
なおそうした中であえて住宅ローン金利が上昇する可能性があるとすれば、熾烈を極める住宅ローン金利競争から脱落する金融機関が出てくるケースです。
実際、 今月=10月の住宅ローン金利は、上記の通り長期金利が順調に低下する中、一部のメガバンクやフラット35は住宅ローン金利を引き上げています。たまたまの可能性もありますが、もしこれが意図的なものなのであれば、今後は割高な住宅ローン金利と割安な住宅ローンとの二極化が進むことになります。
全体的な金利動向が低位安定していても銀行によってはそれほどお得ではないケースがあり得るということですね。その点では、「どの銀行から住宅ローンを借りるのか」という点が今後ますます重要になってくる、ということになりそうです。
参考になさってください。