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住宅ローンの金利タイプ選びについては利用者の間で一定のパターンがあるように思います。
1つ目は、住宅ローン検討の初期の段階では「長期固定金利」に興味を持つけれど、実際に利用する時には「変動金利」を選ぶ方が多い、というものです。
2つ目は、それでも「長期固定金利」を選んだ場合、借り換えのタイミングで「変動金利」に切り替える方が多いというものですね。
どちらも、当初は長期固定金利の金利が変わらない安心感に魅力を感じるけれど、実際の毎月の返済額を見てしまうと変動金利を選んでしまいたくなる、ということではないかと思います。実際に、元本2,500万円×30年で計算すると毎月の返済額は以下のように変化します。
・2.0% : 92,404円
・1.5% : 86,280円
・1.0% : 80,409円
・0.5% : 74,797円
つまり、金利が0.5%減っていくたびに毎月の返済額は6,000円ずつ減少していくのですね!実際、毎月の返済額が約9万2千円と約7万5千円とでは負担感がまるで違います。
こうなってくると、より金利の低い方を選びたくなるのは当然ですね。
加えて専門家のアドバイスを見ると押しなべて「変動金利は危険、全期間固定金利にすべし」という内容になっているわけですが、では一体いつ、どんなタイミングで、どんな理由によって金利が上昇するかと言うと・・・その根拠は全く示されておりません。
結局のところ「変動金利は危険」である根拠は薄いということです。
実際、これまでの金利推移を振り返ってみても日本の金利は90年代のバブル崩壊以降25年以上、金利低下と低金利が続いています。25年もあれば多くの方が住宅ローンを完済してもお釣りがきますね。そのような金利の歴史を振り返っても、金利上昇よりは金利低下を予見する方が自然だと言うことです。
日本が少子高齢化を背景になかなかインフレ経済にならないのと同じ理屈で、なかなか金利上昇に結びつかないのですね。このまま永遠に低金利が続くのではないかとも思えてきます。
それはともかくとして上記のような住宅ローン利用者の方の「行動パターン」があるとすれば、住宅ローンの金利タイプはどんどん変動金利のシェアが拡大していくことになります。
では具体的に住宅ローン金利タイプの割合がどうなっているかと言うと、先日発表された国土交通省の調査ではこのようになっています。
残高ベースの住宅ローン金利タイプの割合ですが、H26年度末=2015年3月にむけて、予想どおり変動金利タイプのシェアがじわじわ拡大していることが分かります。
固定金利期間選択型の残高も減り、全期間固定金利型の残高も減り、2014年3月末に一旦増加した証券化ローン=フラット35も、やはり2015年3月末には減少していることから、変動金利タイプの独り勝ちで状態ですね。
ちなみに固定金利期間選択型は、その固定金利期間が終了すると変動金利に自動的に切り替わりますので、構造的にも変動金利に集約しやすいと言えるのかもしれませんが、いずれにしても住宅ローン利用者の6割近い方が変動金利を利用しているということで、現在の住宅ローン金利選びは「変動金利型」を中心に回っていることは間違いありません。
このように住宅ローン金利タイプの「正確な」割合が分かるといつものようにクサしたくなるのが住宅金融支援機構の住宅ローン金利割合調査ですね。直近の調査結果はこのようになっています。
「残高ベース」と「貸出ベース」という違いはあるものの、国土交通省の調査と同じく2015年3月のシェアを抜き出すとこのようになります。
・変動金利型 : 35.8% (55.3%)
・固定金利期間選択型 : 26.2% (34.4%)
・全期間固定金利型 : 14.7% (3.4%)
・証券化ローン : 23.3% (6.9%)
( )内は国土交通省の数字ですが、比べればその違いは一目瞭然ですね!
そしてどちらの数字が正しいかと言えばもちろん国土交通省の数字です。というのも国土交通省の数字は金融機関からヒアリングした正確な数値であるのに対して住宅金融支援機構の方は毎回300人程度のインターネット調査の結果に基づくものだからです。
そしてこの住宅金融支援機構の調査結果のおかしさは「業態別」の金利タイプを見るとより鮮明となります。まず国土交通省の数字はこういうことになります。
全体的には住宅ローンの変動金利タイプが業態を超えて幅広く支持されていることが分かるわけですが、中でも特に「都銀・信託銀行他」で最も変動金利の比率が高いのですね!
約7割ということですから「ほとんど変動金利」と言っても差支えありません。
ではどうも数字がおかしな住宅金融支援機構の調査結果はと言うとこのようになっています。
その「都銀・信託銀行」の欄を見ると、不自然なくらい変動金利の割合が低いのですね!代わりに全期間固定金利型が約37%と極端に多くなっています。要するに・・・住宅金融支援機構の調査結果はデタラメなもの、ということです。
その結果上記の通り、全期間固定金利型:14.7%+証券化ローン:23.3%=全期間固定金利トータルで38.0%という実態からかけ離れた結果になっています。
このような結果に「誘導」する背景としてはやはり・・・住宅金融支援機構が、代表的な全期間固定金利型住宅ローンである「フラット35」の元締めである、という点が大きいのでしょうね。フラット35のシェアが6.9%か、23.3%かで受ける印象はかなり変わります。
意図的にこのように「全期間固定金利」や「フラット35」のシェアを過大評価させる方向へプロパガンダを仕向けているのだとすれば・・・「悪質」と言っていいのかもしれません。
さらに記者が腹立たしく思うのは、この信憑性の乏しい調査結果を各メディアや専門家が、疑いもせず公知のものとして利用・喧伝している点です。みんな、そんなにフラット35の販売に協力したいのでしょうか?
なお、実はその住宅金融支援機構もインターネット調査だけではなく、金融機関向けのアンケート調査をしておりましてその結果はこのようになっております。
直近の2014年度を抜き出すとこのようになっています。
・変動金利型 : 59.7% (55.3%)
・固定金利期間選択型 : 36.2% (34.4%)
・全期間固定金利型 : 4.1% (3.4%)
・証券化ローン : − (6.9%)
こちらは驚くほど( )内の国土交通省の調査結果と整合していますね!つまり住宅金融支援機構は金融機関への調査を通して、より正確な住宅ローン金利タイプの割合を把握しているということです。
であればなおさら、上記のような問題ある調査結果を修正も見直しもせず垂れ流しているのは「故意」ということであり・・・罪深いですねぇ。
今のところフラット35のシェアと全期間固定金利型のシェアを足してもちょうど約1割とマイナーな金利タイプであるのは間違いありません。マイナス金利政策によって金利上昇懸念が後退している現状では尚更ですね。
読者の皆様に置かれましてはくれぐれもプロパガンダに踊ることなく、正確な情報に基づいて住宅ローン選びをされるよう、ご注意ください。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>