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金融政策決定会合も終了し、3ヶ月に1回更新されている日銀の「経済・物価情勢の展望レポート」の最新版が1月23日に発表されていますね。このレポートでは日銀の物価見通しが述べられておりますので、今後の住宅ローン金利の動向を予測する上で参考になりそうです。
1980年代のバブル崩壊以降、金利がずっと低下してきている主な理由は、いつもご案内しているように日本銀行=日銀が積極的な金融緩和を実施しているからですね。それに伴い、住宅ローン金利もずっと低下しています。
特に2013年からは異次元の金融緩和=「異次元緩和」がスタートし、2016年にはついに「マイナス金利政策」まで導入されましたので、住宅ローン金利は劇的に低下して今に至ります。細かく見れば2016年秋から多少金利は回復しているものの、その上昇幅はごくわずかであり、引き続き「超低金利」と言える状態です。長期金利の推移は以下の通りです。
つまり今後、住宅ローン金利が上昇するかしないかは「日銀の金融緩和次第」ということです。金融緩和が続く限り住宅ローン金利は低金利を維持する一方で、金融緩和が終了すれば住宅ローン金利は上昇に向かうというわけですね。
ではいつ金融緩和が終了するのか気になってくるわけですが、今はその基準も明確になっておりますのでとても分かりやすいですね。具体的には「物価上昇率=インフレ率が安定的に2%を超えてきた時」ということです。
ではこれまでの物価上昇率がどのように推移しているかと言うとこうなっています。
緑のラインで示された「食料・エネルギーを除く物価指数」は引き続き0%近辺に留まっており、物価上昇圧力は極めて弱いです。今のところ住宅ローン金利が「本格的に」上昇する兆しは全くありません。
なおいつもご案内していることですが、2014年4月から物価上昇率=インフレ率が大きく跳ね上がっているのは消費税増税の影響です。と言うのも物価は「税込み」で集計されるからです。
もちろんそうした「人為的」な物価上昇が永続するはずもなく、増税の影響が消えた1年後にはきっちり低下していることが分かります。こうして見ると、「アベノミクス」や「異次元緩和」が2013年にスタートして6年近く経つのに物価はあまり上昇していないわけで、「2%のインフレ率達成」は「相当先」であるのは間違いなさそうです。
そうした点を踏まえ、冒頭ご案内した日銀「経済・物価情勢の展望レポート」の最新版=2019年1月発表分の中身をチェックしてみると今後の物価上昇率について、1年前、9ヶ月前、半年前、3ヶ月前の発表と比較して以下のように予想しています。
・2018年度 : +1.4% → +1.3% → +1.1% → +0.9% → +0.8%
・2019年度 : +1.8% → +1.8% → +1.5% → +1.4% → +0.9% ※増税の影響を除く
・2020年度 : 未掲載 → 未掲載 → +1.6% → +1.5% → +1.4% ※増税の影響を除く
毎度のことではありますが、前回のレポートと比較して微妙に下方修正されたということですね。今回も「予定通り」と言えます。
とすると3ヶ月後の次回もやはりこの物価上昇率の見通しは下がるのでしょうね・・・。
実際、足元では「+0.8%」となっている物価上昇率(生鮮食品を除く)が、2019年に「+0.9%」に留まる一方で、2020年に急に「+1.4%」に上昇するという見通しはやっぱり「強気すぎる」のではないかと思います。もしそんなに簡単に上昇するなら、異次元緩和から6年近く経った今、物価上昇率はもっと上昇しているはずですね・・・。
そうしたわけでちょっと意地悪ですが、これまでの日銀の物価上昇率予想の変遷を集計してみるとこうなります。
緑の「2015年」や青の「2016年」の物価上昇率予想が典型例ですが、当初は2%程度と予想されながら、徐々に下方修正されていき、最終的には0%もしくはマイナスで着地していることが分かります。「2017年」はそこまでではないにしても、やはり右肩下がりで着地しましたね。
とすると「2018年」も「2019年」も「2020年」の予想も同じように推移すると考えてしまうのが当然ですね。実際、「2019年」は今回、大きく下がりましたし・・・。
果たして日銀が期待するように徐々に上昇していくのでしょうか?
記者は悲観的ですが、仮に日銀の予想通りとなったとしても「2020年時点でまだインフレ率は2%を下回っている」という予測ですから
・少なくとも2020年度までは異次元緩和の終了はない
ということで、安心できますね。
ただし。
昨年の金融政策の最大のハイライトは何と言っても2018年7月末に「長期金利の上昇を容認した」という点です。正確には「長期金利の変動幅がこれまでの2倍になることを容認した」ということですが、具体的にはこうなります。
・変更前:−0.1%〜+0.1%
・変更後:−0.2%〜+0.2%
これだけ見れば「上限」だけでなく「下限」も広がっており、「金利上昇」という感じではありませんが、ただ日銀がイールドカーブコントロールによって長期金利を直接操作し始めた2016年9月以降、長期金利は何度もこの上限=+0.1%にトライしては跳ね返されてきた経緯があります。その点ではやはりこの「変動幅拡大」=「金利上昇容認」ということですね。
実際、長期金利のグラフを見てみると2018年7月以降、10月くらいまでは日銀の思惑通り上昇したことが分かります。
ただ10月以降は株価の低迷やアメリカの長期金利の低下を受けて、むしろ「金利上昇容認前」より低い水準まで低下しており皮肉なものですね。本日の長期金利も「+0.005%」という低水準にとどまっています。
このまま金利が下がり続けるのか、逆に再び上昇に転じるのかを予測するのはとても難しいですが、仮に上昇し長期金利が上限である「+0.2%」に到達するとすれば長期金利に連動する「住宅ローン固定金利」もまた、現状の長期金利の水準から逆算そて、0.2%程度上昇する可能性があるということですね。
長期金利に連動しない「住宅ローン変動金利」の人気がさらに高まりそうです。
加えてこの「住宅ローン変動金利」にさらに追い風となるのが、日銀が2018年7月から発表している「フォワードガイダンス」=金融政策の見通しにて、「低金利を当分の間維持する」と約束したことです。
仮に低金利政策を変更する場合は、この「フォワードガイダンス」によって事前に発表されるでしょうから、変動金利ユーザーにとっては対応を検討する十分な時間が与えられることになります。
実質的に「金利上昇リスク」が大きく後退するわけですから、「住宅ローン変動金利」を利用しやすくなりますね。
それはともかくとして、この昨年7月の「長期金利上昇容認」を受けて、新たな金利上昇シナリオが浮上してきました。これまでのメインシナリオに対してサブシナリオとするとこうなります。
・メインシナリオ : 物価上昇率=インフレ率2%達成 → 異次元緩和縮小・終了 → 金利上昇
・サブシナリオ : 物価上昇率=インフレ率2%未達成 → 異次元緩和長期化 → 副作用拡大 → 部分的正常化=長期金利変動幅拡大 → 金利上昇
日銀の決断はまさにこのサブシナリオに沿ったものだったわけですが、今後も同じような決断が続く可能性は十分ありそうです。要するに「隠れた金利正常化」=ステルス金利上昇というわけですね。
ただし、こうした「金利変動幅の拡大」が続いたとしても、誘導目標は「0%」から変更しないでしょうから、最大でも「−1.0%〜+1.0%」といったレンジに留まるのではないかと思います。
その点では冒頭でご案内した「今のところ住宅ローン金利が本格的に上昇する兆しは全くない」という現状認識は変更する必要はなさそうです。
いずれにしても今後は物価上昇率=インフレ率だけでなく日銀の金融政策の変化や、異次元緩和の副作用にも目配りしないといけないということなのかもしれません。当サイトでも積極的にこうした変化については情報発信していきたいと思いますのでチェックしてみてください。
こうした金利上昇が心配な方は繰り返しになりますが、長期金利変動の影響を受けない「住宅ローン変動金利」の利用を検討してみるのが良さそうです。変動金利タイプの金利が最も安定しているというのは何とも皮肉ですが・・・。
参考になさってください。
<日本住宅ローンプランニング編集部>